-無慈悲な従者-
無慈悲な従者
 ぎりぎりと張り詰めていた空気がふうっと緩む。
少女も軽く息をつき、肩の力を抜く。
異形の化け物は、ばらばらの肉片となりながらも、まだ未練がましく生にしがみつこうともがいていた。
 長い黒髪を片手で弄いながら、少女はその様子をただじっと眺めている。
その少女に向かって、首だけとなった化け物が最後の力で飛びかかろうとした。
濁り始めた赤い瞳には、それでもまだ凶暴な光が宿されている。
 己をこのように無様な姿に変えた憎い相手に対する執念……いや、本能に近いものだろうか。
 だが、化け物の一念は遂げられることはなかった。
少女まであと少しのところで、背後から近づいた何者かの足に、ぐいと脳天を押さえつけられてしまったからであった。
煮えくり返るような怒りで上を振り仰ぐ化け物の瞳に、両手で長いスカートをたくし上げ、恭しく礼をする若い女性の姿が映る。
(本文より一部抜粋)

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