-対決-
対決

八重はすっと右腕を差し伸べる。唇から祝詞がこぼれ、金の鈴が拍子に合わせて凛々と鳴る。
蜃気楼のように八重の周囲の大気が揺らめいた。

 八重
「瑞白の護り神よ、古の誓約(うけい)に従い、その身を現世(うつしよ)に現したもう……」

 空間が見えぬ手によって無理やり捻じ曲げられる。
引き裂かれた穴からぬうっと顔を出したのは巨大な白蛇。
巨体をくねらせ、真白な大蛇──オシラサマが現世に具現した。
召還した主を守護するかの如く、長身をぐるりと巻いて八重と四叡の間で壁となる。

 八重
「流れる水の化身、穢れし気を祓い給え清め給え!」

 大蛇が大きく口を開き、純白の身体を震わせる。オシラサマは元々は水と川を司る土地神。
今は八重の式となり、その意のままに力を振るう。
紫電が大蛇の周囲で火花を散らし網の目のように広がる。
オシラサマの神格を示すかのように、色とりどりに光る雷光がその身を飾った。

 八重
「行け!! 急々如律令!!」


(本文より一部抜粋)

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