-月の微笑み-
声は予想もしていなかった場所──頭上からいきなり降ってきた。
鏡子と美玖は慌てて二階の通路を振り仰いだ。美玖は既視感を覚える。
これでは昼間とまるで同じだ。確かに、それまで気配は無かったのに。
まるで虚空からいきなり現れたかのように、そこに緋玄四叡は──いた。
うっすらと差し込む月光が、彼の輪郭を青白い光で浮かび上がらせる。
緋玄には夜が似合う。唐突に美玖はそう思った。
(本文より一部抜粋)