-鋼の双角-
鋼の双角
 しなやかな指がトリガーを無造作に引く。
大口径の銃から、高い殺傷能力を秘めた鉛玉が唸りを上げて敵に襲い掛かった。
膿み爛れた醜い肉隗を引き裂き、その捻じ曲がった命をも食い千切る。
 それは、そう……ある種の快感に違いなかった。僅かに、志乃の唇が持ち上がる。
 轟音が響くたび、正確に打ち抜かれた妖魔が地に伏していく。
何故、この銃を好んで使うのか、八重に問われたことがあった。
その時は曖昧に答えてお茶を濁したように覚えているが、その答はこれだ。

 ──ただ、無条件で闇を凌駕する力があるから。それだけなのですよ、八重様。

(本文より一部抜粋)

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