どくんと心臓が一際高く鳴り響く。
全身が震え上がった。この体は……まだ生きたいと叫んでいる。
こんなにも、貪欲に。細胞の一つ一つが絶叫している。
恐怖と、生への欲望が八重の身体を突き動かした。
スローモーションのように、梁が落ちてくる。
八重
「いやああああぁっ!!!」
神崎
「八重、来い!!」
八重の白い手が、差し伸ばされた大きな手に重ねられた。途端、ぐっと引き摺り寄せられる。
轟音とともに梁は、たった今まで八重が座っていた畳を打ち破った。
弾き飛ばされた木片が炎に包まれたまま飛来する。いくつかは、神崎の身体にぶつかった。
が、その腕の中に包まれた八重にまでは届かない。
八重
「ああ……私……私、は……」
神崎
「逃げるぞ、いいな」
低い声が八重の耳朶を打つ。こくりと八重は幼子のように頷いた。
(本文より一部抜粋)
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