-祓いの白刃-
祓いの白刃
 八重は剣を静かに構える。
冷たい刃は、澄み切った光を月を映す水面のようにたおやかに湛える。
それは、八重自身の霊気が剣の形を成したかのように、少女の意思を体現していた。
葉の一片すら舞うことのない静寂、だが、揺るぎを一切許さぬ巌の如き意思。
 剣から仄かな燐光が立ち上り少女の身体を覆っていく。
唇から呪言が紡ぎ出される度、蛍火のように舞いながら。
 ──漆黒の闇に溶け入るように。それでいて、浮かび上がる輪郭は消えることなく。

 この世にはびこる魔を払う、それが瑞白家の勤め。そっと闇の奥を見据えた八重が微かに囁く。
(本文より一部抜粋)
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